上野のセクキャバ嬢のサービスタイムは優しさに溢れていた

夜の桜
「佐藤さん、サービスタイムのお時間です」
トモコが耳元で囁いてくれた。

サービスタイムとは「女の子がお客様に対して積極的になってくれる時間です」と、店の案内をしてくれた黒服の男性が言っていた気がする。

上野のセクキャバ嬢のサービスタイムは優しさに満ち溢れていた

私はセクキャバに来たと言うのに、なかなか破廉恥な気持ちになれない私に、トモコは
「佐藤さん、私の胸に頭をうずめてください」

私は、自分の頭をトモコの胸にもたれさせた。
温かくて柔らかい感覚。

「セクキャバのお店なので。でも、こうしておけば問題ありません」
とトモコは話す。

涙はいつの間にか止まっていた。

「佐藤さんの奥様は、きっと優しい方だったのでしょうね。奥様もきっと幸せだったんじゃないかって私思うんです。佐藤さんは優しい人だから」

「私は亡くなった妻にとって、いい旦那であったとは思えないんです。
彼女が病気になって病院通いをしていたのに、仕事が忙しいことを理由に付き添えなかったし
ゆっくりと会話をする時間を持ったのも彼女が入院してからだったので」

「入院されてから、いろんなお話をなさったのでしょう?
奥様は幸せだったと私は思いますよ」

トモコはそっと、私の肩をさすってくれた。

そしてサービスタイムが終わった。

「佐藤さん、今日はありがとうございました」
「トモコさんありがとう。また桜の写真を撮ったら、お店に来ますね」

私はトモコがいた上野のセクキャバ店を出た。
足取りは不思議なほど軽い。

帰ったら、亡き妻、朋子との写真でも見るか。
朋子が亡くなってから、見ることがなかった昔のアルバムを押し入れから取り出そう。

そう思えるようになった、上野の春の夜だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です